周りの人たちがチームになってついにゲームをつくったそうです。72時間で。
https://ldjam.com/events/ludum-dare/46/o-d-e-n
感想文を書きます。以後、非常に批判的な内容が多いと思いますが、これは時間が無いことを考慮していない発言なので、「こうできたのではないか」というものではありません。唯このゲームがどういうものであるか、を私の視点で評価するのみです。ちょこちょこ失礼かもしれませんが私は「このゲーム」に対して言っているだけなので深刻な意味は一切ないことを留意してください。どこかしらが将来的になにかに応用できたらそれはそれでいいな、という話と、あと私が何を思うかを記録するのみです。
全体的な「向き」
まずこのゲームは明らかに爽快感とかそういうものを提供するものではありません。比較的情緒的なゲームです。なので丁寧にどうすればいいのか説明するとかは野暮の部類だと思います。その点に於いて、長いムービーとエンドロール、また「放り出された感」は否定されるべきものではなく、正しい存在だと思います。
PRESS ANY KEY
誤字の話はしません。ちなみに色々と「OPムービー後にタイトルが出ても良かったのではないか」について考えたりしたんですが、「ゲームオーバー後に戻る先がない」ということでこれで良い、という結論に至ったりしました。
この「PRESS ANY KEY」というのは一般的な文として知られていますが、それは比較的コントローラベースのゲームが多いと思います。PCにつながっているKEYは多すぎて、特に今回はマウスクリックでさえ進行できます。それは違うのではないかと。
これに加え、ゲームの進行が基本的にスペースキーであることがどこにも書いていないという問題があります (尚、説明文に書いてあったとしてもそれは善くないです)。つまり、これらを同時に解決する手段として、PRESS SPACE が有効であると思います。
ただ、これに対し、「PRESS ANY KEYという文言を加えたかった」という純粋な邪念の存在は理解できるので、それはそれで解釈されるべきものだと思います。
ちなみにこの「任意のキーで進行できる」のは「情緒的なゲーム」と微妙に相性が悪く、何故進行したのかがわからないという結果を生むものだと思います。今回はうっすらとしたフェードアウトなので勝手に始まったのではと思ったりもしました。「わからなさ」そのものは良い側面があるわけですが、ゲーム外部でそれが行われると比較的ネガティブな印象を持つ気がします。
OPムービーと説明文
長いけど何回もやってると慣れてきました。これは必要なものです。OPムービー中のドローンの出す光が一切変化しないのが気になったりしますが大した問題ではありません。
問題なのは操作方法と具象認識の欠如です。「O.D.E.N.が燃料電池であること」「その整備された状況での見た目」「これを使うと生き延びることができること」はわかります。
しかし次のことがわかりません。
- O.D.E.N.がいろんな場所に散らばっていること
- 置いてあるO.D.E.N.の見た目が縞模様であること
- O.D.E.N.を持てること、O.D.E.N.を発動できること、またO.D.E.N.を落とすことができること
- そしてそのキーがSpaceであること
- O.D.E.N.を発動すると周囲が温まること
ムービーでは整頓されたO.D.E.N.が何故散らばっているのかは「世界の解釈」の話なのでまぁいいとして、一応この中で問題であるのは「何がO.D.E.N.かわからないこと」だけです。
その「縞模様の謎の物体」が先程示されたO.D.E.N.であることさえわかれば、これをどうにかするべきであることがわかり、どうにかしようがあります。プレイヤーは悩む権利を得られます。
でも、それさえ与えられない場合、先程見せられたムービーの意味がわからないので、プレイヤーは本来のキャラクター以上に情報が少ない状態でゲームを遊ぶことになります。つまり移入ができません。情緒の生みようがありません。
これはゲーム制作中にあまりにも見慣れすぎてしまったために認知外に出てしまったケースだとは思いますが、見えているものが違うのはだいぶシビアな状況だと思います。当然何らかの強調が必要なのは明らかなわけですが、その手段は深刻に考えたいところですね。今回のO.D.E.N.は背景に溶け込みがちな風貌なので、(ヤバいけど) 常に光っているとか、周期的点滅とか、LEDランプとか、そういう鋭い共通要素があるべきなんだと思います。一応「形状」は共通なんですがちょっと厳しいですね。「色」が一般に良く使われているイメージなわけですが、今回は共通でないのでこの文脈が悪影響に働いている気がします。
「コレ」がO.D.E.N.であることさえ認識できたプレイヤーは、それを持つことさえできれば発動し、基地を温め、同僚を眠らせながらビーコンが光る様子をきっと観測できることでしょう。
わからないこと 続き
当然あの説明だけだとわからないことだらけです。
- 左側にある物体がビーコンであること
- 右側にある物体がDAICONFACTORYであること
- 横長の物体が眠っている同僚たちであること
特にこれはモデルに頼ってしまったことによる問題なのかもしれません。背景からは見事浮くようになってるわけですが、このままだと意味が伝わらないんです。モデルにそれを伝える説得力があるんですが、でも、カメラが遠い。
モデルを活かす為には「モデルを見る権利」をプレイヤーに与えなければならないわけで、今回の視点ではそれは厳しいのではないかと思わざるを得ません。何かであることはわかるんです。でもそれが何であるかを認識するには見える情報が少なすぎるのです。
情緒的でありながら (わざわざ説明を書かないままで) どうにかすることを考えるなら、もっと「見える情報」を増やす、つまり「ビーコンからめちゃくちゃ上にアンテナを伸ばす」とか「DAICONFACTORYに湯気を出させる」とか「コールドスリープ装置にあからさまな棒人間を描く」とかでしょうか。でも平行投影だとアンテナは伸ばしにくいし熱が足りないんだから湯気も出ないですよね。
あと床の飾りの凸凹がちょっと強すぎたかもしれないですね。頭を使えばそれが何でも無いことはわかるわけですが、この区別に多少頭を使いそうです。色相を変えずにおくといいのかも。
特にこのゲームはレンダリングがまともすぎるので色相による区別がうまく行えない状況になっている気がします。プレイヤーの出すライトに色載ってるし、白飛びしてるし。 あと基地が微妙に全体的に赤いのもよくなくて、あまりにも一様に赤いのでそこに意味を見出すのが難しくなっていると思います。この色味効果は床だけにするのが比較的良い解でしょうか。
モデルが十分情報を持っていてもゲーム画面でそれが放出されなければ意味がないわけです。その段階で調節をするのがきっと必要なことなのです。
情報表示
これです。これが情報源として機能し難いのも厳しい。これの持つべき役割は次だと思います。
- 温度の概念が床毎にある
- 適温という概念が床毎にある
- 空腹量という概念がある
私は1つ目がわかりませんでした。プレイヤーにあるのかと思ったんです。つまり「寒いところに居ると死ぬ」という解釈です。でも実際はそうじゃなかった。これはそういうゲームをやっていると解釈にハマりそうな気がします。特に矢印でプレイヤーを指しているのが悪影響を持っていて、実際にはその下の「床」及び「空間」を示しているんですよね。これは「キャラクターそのものの情報」ではなく「キャラクターが見ているHUD」だったわけです。
この解釈をさせないためには「プレイヤーはどんな温度にも耐えうることの提示」と「温度ゲージをキャラクター情報表示から分離する」必要があると思います。宇宙服着てるとはいえその実感があるわけでもない気もするのです…どうすればいいんだろう。まぁそれこそ一定値を維持するプレイヤー温度表示をキャラクターが見ているHUDに取り付けるとかでもいいのかも。つまり「結果で以て因果を誘導する」感じ。それこそ外気温の差とか出してちょっと揺らぐようにすれば情緒があるのではないでしょうか。
三人称視点でどこにプレイヤーの見ているHUDを出すのか問題はまぁ当然ありますが…画面の下1/8を削って別画面として認知させるとか、まぁいっそのこと被せちゃうとか。今回プレイヤーの位置が中央に来るので明示的に「何がプレイヤーか」を提示しなくてもきっと理解してくれる気はします。
さて、「適温」という概念ですが、これは結構難しいです。これは説明文を読むとさらに理解が深まります。
The right temperature is the key to everything!
何事も適温が大切って事さ!アハハ!
これはどういう意味かというと、深読みすると、何故適温が大切なのかがわからない、という意味になっています (これは投げやり的であることから説明を放棄するという姿勢、及びそこから説明が出来ないという暗の状況を推察しました)。
適温という概念は「対象」が存在して初めて実在できます。その対象はビーコンや同僚たちなどが具体的には在るわけですが、このゲームは、何も設置されてない床にも適温があるんです。これが問題です。
逆に外に出ると適温の領域が一致するまで下がるわけですが、この状態の解釈も非常に困難です。適温が望ましいことはわかっても、プレイヤーには成す術が無いのです。
そこから更に根本的に適温領域バーのアニメーションが存在することが不自然であることがわかります。これは連続的な概念ではないんです。「対象」は離散的な物体なのです。
つまり、「対象」が存在するときに (キャラクターがその物体の状態を確認するという解釈で以て) バーがフェードインして、適温領域を示し、対象が存在しないときにはフェードアウトする、が適切だと思います。ちなみに今回は「対象」がどれも隣接していないので良いんですが隣接している場合に遷移するなら「2つのバー対が独立にフェードイン/アウトする」のが正解だと思います。
ちなみに対象が適温で無いときに「何も起きていない」のはあまりにも無力すぎるので (どう変化すればいいのか初心者はわからない)、適温に近いときには軽くぎこちないアニメーションが入っていて、適温に入ると規則的で安定的な見た目になる、みたいなのが望ましいとは思います。
最後に空腹ゲージですが、バグっぽい挙動はおいとくとして、インジケータの点滅が非常に遅いことがちょっと気になっています。もっと速ければ「今この間なんだな」ということが瞬時にわかるわけですが、ぱっと見た時には認識できる量が1つずれることがあるわけです。
空腹という概念は比較的非可観測 (腹の中の量は数値ではわからないので) という点で好意的解釈が出来ないわけでもありませんが、それを言うなら空腹が段階的な物 (だんだん動けなくなっていく) であることを考慮したいところです。死は突然にやってくるのではなく移動量がだんだん小さくなっていって動けなくなった結果死ぬような気もするのです。
ヤバいって言われてるのに全然動けないのはめちゃくちゃ焦燥感あってしんどいかもしれませんが、別に時間伸ばしてもいいし、段階的な影響は最後の5秒くらいとかでもいいし。なんであれこの情緒的なゲームで急激に死が訪れるのはちょっともったいない気がします。
同僚の死
これはもうどうしようもない話ですが、同僚が全員死ぬとゲームオーバーなのは (願いとしては) いいんですが解釈が難しいですよね。ゲームオーバーの動画もプレイヤーが倒れているものなわけで。なんか将来的に起こりうることはよくわかるんですけど。
後「同僚が2人眠りについた」ことでWarningが発動するのはゲーム的レイヤーでは正しいんですがキャラクターレイヤーでは難しい気もします。まぁこれは上と同じところから来るものなわけですが。んー。多分基地自体のコア機能が壊れる、みたいなほうがいいんでしょうけど、同僚を眠りにつかせたかったならしょうがないと思います (いい意味です)。
あとそういえばこのコールドスリープ機械については「適温の最低レベルに達すると永眠」っぽいので、適温という解釈がちゃんと働かない気がします。どちらかというと最低レベルは一番下にあって、判定ラインが上限なんだと思います。
クリア
突然ビーコンが完遂してクリアする、ということで比較的「衝撃的にクリアがやってくる」のはまぁいい気がします。救助がやってくるかどうかは実際わからないものでしょう。
ただ「一定時間ビーコンを連続稼働させる必要がある」ことを解釈するのがちょっと難しそう。ビーコンが一回動作しなくなると最初からやりなおし、らしいんですが。
救助は恐らく「信号をキャッチしたとき」に起きると思うし、救難信号にはそんなに情報は含まれてないと思うので、その意思疎通ができるのは恐らく一瞬だと思うのです。つまり連続稼働はそこまで必要なさそうです。
でもゲームとして連続稼働を要求するのは妥当です。そこでちょっと考えてみた解決策としては、「ビーコンの起動」と「ビーコンの発動」を分離するというのがあるかもしれません。つまり一度ビーコンが適温でなくなると起動前に戻り、適温になったらアニメーションを介して「発動」状態に至る。
そうすると連続稼働させたくなると思うんです。起動時間がもったいないことがわかるから。
また、これをやるとクリア条件を変更して「ビーコン発動中に救難信号を受信されたらそのうちクリアする」という風にもできそうです。ただあまりにもリアルすぎかもしれませんが。まぁこの辺は「見えない世界の話」なので、やったところで理解される必要は無いと思います。一定時間なのかあるタイミングが存在するか、というのは情緒レベルでは大した話ではないと思います。
DAICONFACTORY
これは最初に思ったことですが、ODENに2つの意味があるのがヤバい。つまり燃料電池と、おでん缶です。コメント欄でも突っ込まれてますね。
あるモチーフが2つの意味を独立に持ってしまう、というのはそれそのものが文脈と化す可能性があって (これは伏線回収とかそういう意味)、その意図が無い場合にはあまり勧められることではなさそうです。
さらに今回は燃料電池が (多分) 大根の形状なわけで、食べる方の機械のベースモチーフが大根と一致しているのもまた微妙なところです。燃料電池はこんにゃくとかのほうが良かったのかもしれません (適当なことを言っています)。
どちらにもおでんを採用する (即ちベース世界観レベルまで引き上げる) なら、その中での細分化が必要なんだと思います。そうじゃないと言葉遊びできっと終わってしまうのです。
あとこのDAICONFACTORYは (ドローン以外では) インタラクト可能な唯一の設置物なわけですが、その操作が明らかでないのも厳しいところです。私は「ドローンが喋らないこと」で操作が出来ていることを確認していますが、こういう否定ベースの判定は肯定時の挙動を知って初めてできることなので、まぁ、微妙だと思います。
あとおでん缶は一度完成するとストックされて好きなときに取り出せるようなわけですが、まぁストックされているのかどうかわからないし。ディスプレイに表示があっても良かったのかもしれません。今のままでも気まぐれ機械感があって好きですけど。
効果音の話
まずドローンがすごい喋るのが危ない気がします。というのはドローンはほぼ意味の無いオブジェクトなわけで、それが効果音ですごく自己主張するというのは正しい重要度認知を阻害する部分があります。特に高周波だし。
あと全体的に設置物がちゃんと効果音が鳴るのはいいんですが、でも見た目に変化があまり無いことで何故鳴っているのかがわからないケースが結構ありました。
- 同僚の心電図の音
- DAICONFACTORYの水音
- DAICONFACTORYの電子音
- (あとDAICONFACTORYの排出が早すぎて効果音と合ってない)
特に水音の範囲が正しく広すぎるけど音の向きがわからないので発生源の理解が難しいというのがありました。あと心電図の音は多分ゆっくりすぎる (まぁ眠っているのでそんなものなのかしら / いやまず心臓動いてるのかしら) のでゲーム的に認識が遅い (HUNGRYと同じ問題、特にこれは音なので環境音と区別がつきにくい)、というのもあると思います。
逆にビーコンの運転音が無いのはゲームの重要な要素としては悲しい気がします。と、ここまで書いて視覚情報がある物体と聴覚情報がある物体に二分されていることに気が付きました。
確かに視覚と聴覚はどちらもゲームにおける情報提示には一般的な物なわけですが…今回のケースだと聴覚は比較的使いにくい部類であると思います。三人称視点なので。
擬似的に「見かけ上のステレオ感」を出すのは有効だったかもしれません。キャラクターの向きだと多分混乱するので。うーんでも素直にうまくいくような気はあまりしないですね。難しい。
最も望ましいのは「視覚と聴覚が共に現象を表現する」ことだと思いますし、ゲームという媒体の良い点はそこだと思うのですが、こう、まぁ、余裕があるとやりたいやつですね。はい。
おまけ
外気
もともとだいぶしんどみあるゲームバランスなのに加えて不可観測不可制御パラメータが存在するのはめちゃやばい気がします。せめて観測はさせてほしい。いやギリギリ観えるんですけど、その原因は知らないので。はい。
フォント
タイトルロゴ (わくわく感)・和文説明 (やわらかSF感)・英文説明 (標準的文書)・GameOver (デザイン的)・エンドロール (電子SF感) が全部雰囲気の違うフォントなんですよね。フォントは結構世界観を表現するところがあるのでアレできるとアレだと思います。まぁアレです。
まとめ
やっぱりこういう場で遊んでもらうには「理解」を提供しないといけないので、まぁ、情緒的なゲームは比較的遊ばれにくい部分はあると思います。なのでこんなものではあるとは思います。
ただまぁもうちょっと「知らせる」ことができれば「理解への道筋」は提供できたかもしれないので、こう、まぁ、むずかしいねというところです。はい。
むずかしいですね。
おわり
あれです。こういうゲームとかワールドとかを見ているときに考えていることを言語化しておくというのは前からやりたかったんですが、今回その丁度良い対象があったのでやっちゃった感じです。どうもすみません。
みなさん本当にお疲れさまでした。いろいろとやっていきです。