Imaginantia

思ったことを書きます

望まれない考察

物語の話です。

最近なんだか話題になってたVivyを見ました。よかったです。

で、自分にとっての解釈と結論が出た状態で他人の感想を見に行くのが好きなんですが、ちょこちょこ興味深い気持ちになりました。

「設定の整合性」の話です。

以下、可能な限り「情報」は書かずに書いています。

 

全てのSFは「破綻すべく生まれるもの」だと思います。何故なら破綻しなければ新しい世界が見えないからです。

ここで「破綻」というのは「前提を追加すること」を指します。

前提を追加することで起こりうる矛盾を、展開の強さによって覆い隠す、というのが物語の基本構造、だと思っています。

要は「こんなことあったらおもしろいよね」って言う話です。いえ、正確には「おもしろいことになるよね」ですね。

基本的には何かを追加すると何かが壊れるものです。だから、その「何を許し、何を許さなかったか」という世界の境界が、その物語の意思であり、提示する対象でもあると思うのです。

 

さて、Vivyは初めから終わっています。

過去に戻るしAIは自律してるしUIは意味不明、もはやギャグとして有名な 𝑆𝑖𝑛𝑔𝑢𝑙𝑎𝑟𝑖𝑡𝑦 という言葉を山程呟くのは笑う他ありません。

つまりテーマはそこではありません

何よりもちゃんと説明されているのが「使命」という概念です。そしてそれがこの話の一貫した軸に見えます。

単純な話です。この概念についての解釈を構成するためにたくさんの前提を詰め込んだ、と言えるわけです。

概念の発展型を提示する為には過去に戻ろうが歌を歌おうが異常な技術が発達しようが問題はありません。

あとは「気にするべき矛盾」だけを避けて話を展開すればいいのです。

「心」については起承転結のファクターでしかない気がしています。あと無数にある既存作品への問いかけ。

 

技術的な話を色々と知っていると「どう考えても無理」であることを判定できるようになることがあります。

例えばハッキング、完全なAR、大容量通信、綺麗すぎるUI、プログラムの暴走、ちゃんとした知性…。

特に「実現不可能だろう」というよりも、「そう演出したのは自然に起きるからではなく作者がやりたかっただけだろう」という判断ですね。

だからこの辺の判定を迷うことはほぼ無いんじゃないでしょうか。まぁ完璧に実現可能な作品が存在した覚えは一切無いですけど。現実以外で。

要は「いろいろ知ってると気になってくる」現象には先があるという話です。

もうちょっと楽しむ為に眼を変えるべきなのです。

 

ということで技術系の話については概ね無視できるようになった気がする私なんですが、Vivyの10話ラストで敗北しました。

その破綻を許していいのかって思っちゃった。私の負けです。

アレは、本来ならば最も得意と言えるはずの「情報の複製」という能力を否定しているのです。

…こう書くと技術的に見えますが、まぁ観た人はわかるように、言葉にすれば単純なことです。

そしてその単純さが故に効力はめちゃくちゃ大きいその代償も

人間が「複製の失敗」に気づいていない、っていうのは私にとって大きな違和感でありました。

ただ、まぁその違和感によって別の物を際立てる、っていう意図とその実現は、とても納得できるものでした。

なのでまぁこれは私がその違和感を忘れれば良い話ではあるんです。そういう構造なのです。

これを含めて物語として…すなわち「複製の失敗に気づいていない」ということがあのテーマの一部 (不理解性) として解釈され、その上でVivyが「正解を提示する」っていう意味 (=唯一性、語られた可能性への反論) なんだと捉えることが出来ないわけでもないけど…
人間が気づいていないのではなく、同一性の解釈範囲が広いっていう解釈もできるし事実それは歴史上実在しているわけですが…
そこまで考えてない気がする。

 

長くなってしまいました。

まとめると、「破綻は基礎として、その上に描かれたものを純粋に受け取るべき」「でも中途半端な知識だとなかなかそれが出来なくて大変ね」という話でした。

おわり。

 


 

追記

phi16.hatenablog.com

違うことを書いているようでまぁ同じ話ですね。ちゃんと文章にするとわかりやすいね。